新学科立ち上げにあたり、提携校であるサイバー大学の川原学長と、 鳥居校長がMITで客員研究員をしていた時の恩師である宮川教授に、 校長自ら新学科の魅力と期待についてうかがいました。(2015/9/30掲載)

川原 洋先生プロフィール

天然資源探査システムに始まりソフトウェア・エンジニアリンングにいたるまで、国内外の企業において技術職を歴任。 2000年ソフトバンクグループに入社し、数々の新規事業や海外ベンチャーとの共同出資企業の立ち上げをCTOとして担当。 2007年にソフトバンク出資による日本初の4年制フルオンライン大学、サイバー大学の設立に教授職として参画。 2012年4月学長就任、現在に至る。
マサチューセッツ工科大学工学部博士課程修了 (工学博士)

宮川 繁先生プロフィール

現在マサチューセッツ工科大学(MIT)教授と東京大学特任教授・オンライン教育統括ディレクターを兼任。 MITでは1991年から理論言語学の教授職につき、オープンコースウェアやMOOC(ムーク)にも深く関わる。 今年のNHK主催「日本賞」の候補(Finalist)に選ばれたVisualizing Japan(日本の視覚化)や自身の幼少期の体験をもとに開発したStarFestivalは世界的に高く評価されている。 今年5月にはBBCのRadio4で宮川教授の人類言語の進化の統合仮説についてのスペシャル番組が放送された。

Q) サイバー大学で学ぶ意味を、学長として川原先生自ら語っていただけますか?

川原氏
最先端のサイバー大学で学ぶ事はもちろん、一番重要なのは専門学校と大学で同時に学ぶという新しいスタイルです。いま文部科学省は職業実務教育にとても力を入れています。その点で専門学校は実務教育中心で、その結果として就職率が非常に高い。つまり企業や産業界の要望にしっかり応えているということです。しかし同様に社会的視点での学歴も重要です。企業によっては大卒前提で採用するところもあります。ですから実務スキルと学位の両方をもっているのが一番強い新社会人と言えます。これがまさしく船橋情報ビジネス専門学校とサイバー大学の併修制度の狙いなのです。両方のいいとこ取りですね。
 2つの学校に行く方がそれだけ視野が広がり、より多くの先生や同級生と出会う機会も増えます。サイバー大学は学生の年齢も職業も違うし、住んでいる地域も15ヶ国程に広がっています。多様性が大事とよく言われますが、年齢も職業も異なる多様性に富んだ同級生が幅広い学びの場を共有してくれます。毎日専門学校に通いクラスの仲間と勉強するのに加えて、ネット上には別の学校があり、別の授業があり、別の同級生がいるというように、バーチャルな空間で新しい体験ができるということです。



鳥居
私はこの新しい学科には、ぜひチャレンジャータイプの高校生に来て欲しいと思っています。それは対面授業の専門学校とeラーニングのサイバー大学の組み合わせという、今までにないユニークな学びのスタイルだからですが、eラーニングについて幅広い知見をお持ちの宮川先生は、この点をどう思われますか?
宮川氏
教育の世界は今後5年間で根本的に変わると思っています。我々が気付いていないだけで、すでに変化は起きています。MITの学生を見ていても、20年前と今では学び方が根本的に違っています。今までは先生が権威であり、その知識を学習者に伝えていましたが、いまやインターネットの普及により学習者は必要な知識を自力で探して、どんどん自分から学べるようになりました。こういう学びの姿勢がこれからの社会ではとても必要とされています。このような観点からも専門学校とサイバー大学の組み合わせは非常に面白いですね。
 社会は常に新しい技術を必要としていて、アメリカなどでは生涯において数回キャリアを変えるのは普通だと言われています。ただ単に転職するのでなく仕事そのものを変えるのです。そのためには意欲を持って、常に新しいことを学び続ける必要があります。その土台となるのは大学で受ける幅広い教育と専門学校で身に付ける技術力です。その両方を学ぶため、教室だけではできないこととeラーニングだけではできないことを、ハイブリッドな学びのスタイルで補い合うというのは、とても貴重な試みだと思います。

Q) 学生が自ら学ぶという話が出ましたが、サイバー大学ならではのユニークな学習スタイルというのはあるのでしょうか。


川原氏
サイバー大学の科目、特にビジネス系の科目は、実際に社会で活躍している人たちが自らが教員となり、企業もしくは産業界から見て重要だと思うテーマを体系化して授業に仕上げて提供しています。そして常に最新の内容を伝えられるよう、授業をeラーニングとして一方的に提供するだけにとどまらず、教師や学生間での双方向でのタイムリーなコミュニケーションと実体験を非常に重視しています。例えば今学期の私のゼミでは電子出版について学んだのですが、最終的には学生全員がKindleによる出版を果たし、Amazonで販売を開始しました。自分の学習成果を一般読者に買ってもらうのです。このような授業を超えた体験もどんどんして欲しいです。
 ※KindleはAmazonが製造、販売する電子書籍リーダー

Q) 東大とMIT両方の教授という観点から、専門学校や大学など日本の高等教育について何を感じられますか?

宮川氏
日本に限らず世界全体に当てはまるかと思いますが、教育というのは何百年も本質的には変わっていません。もしニュートンが生き返ってMITの研究室に来たら、見たこともない機械ばかりでチンプンカンプンだと思います。しかし講義室に入ったら、全く同じことをやっているじゃないかと感じるでしょう。教育は不思議なほど変わっていないと思います。これだけネットやeラーニングが普及した世界で、MITや東大、京大が数百年前と変わらないスタイルで根強く教育をしているということは驚きです。まだ東大やMITは変わる必要を感じていないのかも知れません。しかし学習者は完全に変わっています。大学の方が20年くらい遅れているのです。ぜひ専門学校やサイバー大学に新しい教育のスタイルを作って行って欲しいと思います。


鳥居
最近よく話題になる「グローバル人材」ですが、そういう人材を目指す高校生に対して、何を考え学んだらよいのかアドバイスをいただきたいのですが。


川原氏
自分が何をやりたいかを突き詰めて行くと、結果としてそれは国境を突き抜けて他の国の人達と仕事をするということになります。当然英語を使ったコミュニケーションも必要になるでしょうが、やはり一番大切なのは自分がやりたいことを見つけて、それに向かって邁進することだと思います。私の場合は高校時代に山登りが好きで、とにかく自然を相手とする広いフィールドで働きたいと思っていました。結果として海洋工学の勉強をすることになったのですが、まずアメリカ西海岸の大学で物理を学び、次に東海岸のMITで海洋工学の研究をしました。最初からMITに行こうと思ったわけではなく、やりたいことを突き詰めて行ったら結果としてそうなりました。



宮川氏
MITの教員は約1000人いますが、半分以上は外国で生まれ育ちました。私もそうですけど。そういう場所に居るとグローバル人材が当たり前になるのです。日本ではこういう環境がありませんので、とにかく外に出ることだと思います。明治時代からそうですが、日本の強さというのは、どんどん外に出て行って、そこで学んだことを持ち帰り、日本の社会や文化にうまく導入してきたということです。これが日本人のとてもユニークな力なのですが、今は少し弱まっているのではと感じています。高校生の皆さんはどんどん外へ出て、学んだことを日本に持ち帰って欲しいと思います。グローバル人材という言葉が無くなってしまうくらいに。
鳥居
お二人が共通して言われているのは、外に出るのが一つのきっかけになるということですね。

川原氏
現状に甘んじるなということだと思います。人より高い目標を常に目指して欲しいです。ロケットは発射角度が高ければ高いほど遠くまで飛べます。皆さんも高い目標に向けて一気に飛び立って欲しいですね。

鳥居
先生方、本日は大変貴重なお話をありがとうございました。